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6 | Last updated 7/21/2001 | 6 | ||
7 | 渋谷栄一校訂(C)(ver.1-2-2) | 7 | ||
8 | 8 | |||
9 | 朝顔 | 9 | ||
10 | 10 | |||
11 | 光る源氏の内大臣時代三十二歳の晩秋九月から冬までの物語 | 11 | ||
12 | [主要登場人物] | 12 | ||
13 | 13 | |||
14 | 14 | |||
15 | 15 | |||
16 | 16 | |||
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18 | 18 | |||
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24 | 24 | |||
25 | 25 | |||
26 | 26 | |||
27 | 27 | |||
28 | 第一章 朝顔姫君の物語 昔の恋の再燃 | 28 | ||
29 | 29 | |||
30 | 30 | |||
31 | 31 | |||
32 | 32 | |||
33 | 33 | |||
34 | 34 | |||
35 | 第二章 朝顔姫君の物語 老いてなお旧りせぬ好色心 | 35 | ||
36 | 36 | |||
37 | 37 | |||
38 | 38 | |||
39 | 39 | |||
40 | 40 | |||
41 | 41 | |||
42 | 42 | |||
43 | 第三章 紫の君の物語 冬の雪の夜の孤影 | 43 | ||
44 | 44 | |||
45 | 45 | |||
46 | 46 | |||
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48 | 48 | |||
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51 | 51 | |||
52 | 【出典】 | 52 | ||
53 | 【校訂】 | 53 | ||
54 | 54 | |||
55 | 第一章 朝顔姫君の物語 昔の恋の再燃 | 55 | ||
56 | [第一段 九月、故桃園式部卿宮邸を訪問] | 56 | ||
57 | 斎院は、御服にて下りゐたまひにきかし。大臣、例の、思しそめつること、絶えぬ御癖にて、御訪らひなどいとしげう聞こえたまふ。宮、わづらはしかりしことを思せば、御返りもうちとけて聞こえたまはず。いと口惜しと思しわたる。 | 57 | ||
58 | 長月になりて、桃園宮に渡りたまひぬるを聞きて、女五の宮のそこにおはすれば、そなたの御訪らひにことづけて参うでたまふ。故院の、この御子たちをば、心ことにやむごとなく思ひきこえたまへりしかば、今も親しく次々に聞こえ交はしたまふめり。同じ寝殿の西東にぞ住みたまひける。ほどもなく荒れにける心地して、あはれにけはひしめやかなり。 | 58 | ||
59 | 宮、対面したまひて、御物語聞こえたまふ。いと古めきたる御けはひ、しはぶきがちにおはす。年長におはすれど、故大殿の宮は、あらまほしく古りがたき御ありさまなるを、もて離れ、声ふつつかに、こちごちしくおぼえたまへるも、さるかたなり。 | 59 | ||
60 | 「院の上、隠れたまひてのち、よろづ心細くおぼえはべりつるに、年の積もるままに、いと涙がちにて過ぐしはべるを、この宮さへかくうち捨てたまへれば、いよいよあるかなきかに、とまりはべるを、かく立ち寄り訪はせたまふになむ、もの忘れしぬべくはべる」 | 60 | ||
61 | と聞こえたまふ。 | 61 | ||
62 | 「かしこくも古りたまへるかな」と思へど、うちかしこまりて、 | 62 | ||
63 | 「院隠れたまひてのちは、さまざまにつけて、同じ世のやうにもはべらず、おぼえぬ罪に当たりはべりて、知らぬ世に惑ひはべりしを、たまたま、朝廷に数まへられたてまつりては、またとり乱り暇なくなどして、年ごろも、参りていにしへの御物語をだに聞こえうけたまはらぬを、いぶせく思ひたまへわたりつつなむ」 | 63 | ||
64 | など聞こえたまふを、 | 64 | ||
65 | 「いともいともあさましく、いづ方につけても定めなき世を、同じさまにて見たまへ過ぐす命長さの恨めしきこと多くはべれど、かくて、世に立ち返りたまへる御よろこびになむ、ありし年ごろを見たてまつりさしてましかば、口惜しからましとおぼえはべり」 | 65 | ||
66 | と、うちわななきたまひて、 | 66 | ||
67 | 「いときよらにねびまさりたまひにけるかな。童にものしたまへりしを見たてまつりそめし時、世にかかる光の出でおはしたることと驚かれはべりしを、時々見たてまつるごとに、ゆゆしくおぼえはべりてなむ。内裏の上なむ、いとよく似たてまつらせたまへりと、人びと聞こゆるを、さりとも、劣りたまへらむとこそ、推し量りはべれ」 | 67 | ||
68 | と、長々と聞こえたまへば、 | 68 | ||
69 | 「ことにかくさし向かひて人のほめぬわざかな」と、をかしく思す。 | 69 | ||
70 | 「山賤になりて、いたう思ひくづほれはべりし年ごろののち、こよなく衰へにてはべるものを。内裏の御容貌は、いにしへの世にも並ぶ人なくやとこそ、ありがたく見たてまつりはべれ。あやしき御推し量りになむ」 | 70 | ||
71 | と聞こえたまふ。 | 71 | ||
72 | 「時々見たてまつらば、いとどしき命や延びはべらむ。今日は老いも忘れ、憂き世の嘆きみな去りぬる心地なむ」 | 72 | ||
73 | とても、また泣いたまふ。 | 73 | ||
74 | 「三の宮うらやましく、さるべき御ゆかり添ひて、親しく見たてまつりたまふを、うらやみはべる。この亡せたまひぬるも、さやうにこそ悔いたまふ折々ありしか」 | 74 | ||
75 | とのたまふにぞ、すこし耳とまりたまふ。 | 75 | ||
76 | 「さも、さぶらひ馴れなましかば、今に思ふさまにはべらまし。皆さし放たせたまひて」 | 76 | ||
77 | と、恨めしげにけしきばみきこえたまふ。 | 77 | ||
78 | 78 | |||
79 | [第二段 朝顔姫君と対話] | 79 | ||
80 | あなたの御前を見やりたまへば、枯れ枯れなる前栽の心ばへもことに見渡されて、のどやかに眺めたまふらむ御ありさま、容貌も、いとゆかしくあはれにて、え念じたまはで、 | 80 | ||
81 | 「かくさぶらひたるついでを過ぐしはべらむは、心ざしなきやうなるを、あなたの御訪らひ聞こゆべかりけり」 | 81 | ||
82 | とて、やがて簀子より渡りたまふ。 | 82 | ||
83 | 暗うなりたるほどなれど、鈍色の御簾に、黒き御几帳の透影あはれに、追風なまめかしく吹き通し、けはひあらまほし。簀子はかたはらいたければ、南の廂に入れたてまつる。 | 83 | ||
84 | 宣旨、対面して、御消息は聞こゆ。 | 84 | ||
85 | 「今さらに、若々しき心地する御簾の前かな。神さびにける年月の労数へられはべるに、今は内外も許させたまひてむとぞ頼みはべりける」 | 85 | ||
86 | とて、飽かず思したり。 | 86 | ||
87 | 「ありし世は皆夢に見なして、今なむ、覚めてはかなきにやと、思ひたまへ定めがたくはべるに、労などは、静かにやと定めきこえさすべうはべらむ」 | 87 | ||
88 | と、聞こえ出だしたまへり。「げにこそ定めがたき世なれ」と、はかなきことにつけても思し続けらる。 | 88 | ||
89 | 「人知れず神の許しを待ちし間に | 89 | ||
90 | ここらつれなき世を過ぐすかな | 90 | ||
91 | 今は、何のいさめにか、かこたせたまはむとすらむ。なべて、世にわづらはしきことさへはべりしのち、さまざまに思ひたまへ集めしかな。いかで片端をだに」 | 91 | ||
92 | と、あながちに聞こえたまふ、御用意なども、昔よりも今すこしなまめかしきけさへ添ひたまひにけり。さるは、いといたう過ぐしたまへど、御位のほどには合はざめり。 | 92 | ||
93 | 「なべて世のあはればかりを問ふからに | 93 | ||
94 | 誓ひしことと神やいさめむ」 | 94 | ||
95 | とあれば、 | 95 | ||
96 | 「あな、心憂。その世の罪は、みな科戸の風にたぐへてき」 | 96 | ||
97 | とのたまふ愛敬も、こよなし。 | 97 | ||
98 | 「みそぎを、神は、いかがはべりけむ」 | 98 | ||
99 | など、はかなきことを聞こゆるも、まめやかには、いとかたはらいたし。世づかぬ御ありさまは、年月に添へても、もの深くのみ引き入りたまひて、え聞こえたまはぬを、見たてまつり悩めり。 | 99 | ||
100 | 「好き好きしきやうになりぬるを」 | 100 | ||
101 | など、浅はかならずうち嘆きて立ちたまふ。 | 101 | ||
102 | 「齢の積もりには、面なくこそなるわざなりけれ。世に知らぬやつれを、今ぞ、とだに聞こえさすべくやは、もてなしたまひける」 | 102 | ||
103 | とて、出でたまふ名残、所狭きまで、例の聞こえあへり。 | 103 | ||
104 | おほかたの、空もをかしきほどに、木の葉の音なひにつけても、過ぎにしもののあはれとり返しつつ、その折々、をかしくもあはれにも、深く見えたまひし御心ばへなども、思ひ出できこえさす。 | 104 | ||
105 | 105 | |||
106 | [第三段 帰邸後に和歌を贈答しあう] | 106 | ||
107 | 心やましくて立ち出でたまひぬるは、まして、寝覚がちに思し続けらる。とく御格子参らせたまひて、朝霧を眺めたまふ。枯れたる花どもの中に、朝顔のこれかれにはひまつはれて、あるかなきかに咲きて、匂ひもことに変はれるを、折らせたまひてたてまつれたまふ。 | 107 | ||
108 | 「けざやかなりし御もてなしに、人悪ろき心地しはべりて、うしろでもいとどいかが御覧じけむと、ねたく。されど、 | 108 | ||
109 | 見し折のつゆ忘られぬ朝顔の | 109 | ||
110 | 花の盛りは過ぎやしぬらむ | 110 | ||
111 | 年ごろの積もりも、あはれとばかりは、さりとも、思し知るらむやとなむ、かつは」 | 111 | ||
112 | など聞こえたまへり。おとなびたる御文の心ばへに、「おぼつかなからむも、見知らぬやうにや」と思し、人びとも御硯とりまかなひて、聞こゆれば、 | 112 | ||
113 | 「秋果てて霧の籬にむすぼほれ | 113 | ||
c1 | 114 | あるかなきかに移る朝顔」<BR> | 114 | あるかなきかに移る朝顔<BR> |
115 | 似つかはしき御よそへにつけても、露けく」 | 115 | ||
116 | とのみあるは、何のをかしきふしもなきを、いかなるにか、置きがたく御覧ずめり。青鈍の紙の、なよびかなる墨つきはしも、をかしく見ゆめり。人の御ほど、書きざまなどに繕はれつつ、その折は罪なきことも、つきづきしくまねびなすには、ほほゆがむこともあめればこそ、さかしらに書き紛らはしつつ、おぼつかなきことも多かりけり。 | 116 | ||
117 | 立ち返り、今さらに若々しき御文書きなども、似げなきこと、と思せども、なほかく昔よりもて離れぬ御けしきながら、口惜しくて過ぎぬるを思ひつつ、えやむまじく思さるれば、さらがへりて、まめやかに聞こえたまふ。 | 117 | ||
118 | 118 | |||
119 | [第四段 源氏、執拗に朝顔姫君を恋う] | 119 | ||
120 | 東の対に離れおはして、宣旨を迎へつつ語らひたまふ。さぶらふ人びとの、さしもあらぬ際のことをだに、なびきやすなるなどは、過ちもしつべく、めできこゆれど、宮は、そのかみだにこよなく思し離れたりしを、今は、まして、誰も思ひなかるべき御齢、おぼえにて、「はかなき木草につけたる御返りなどの、折過ぐさぬも、軽々しくや、とりなさるらむ」など、人の物言ひを憚りたまひつつ、うちとけたまふべき御けしきもなければ、古りがたく同じさまなる御心ばへを、世の人に変はり、めづらしくもねたくも思ひきこえたまふ。 | 120 | ||
121 | 世の中に漏り聞こえて、 | 121 | ||
122 | 「前斎院を、ねむごろに聞こえたまへばなむ、女五の宮などもよろしく思したなり。似げなからぬ御あはひならむ」 | 122 | ||
123 | など言ひけるを、対の上は伝へ聞きたまひて、しばしは、 | 123 | ||
124 | 「さりとも、さやうならむこともあらば、隔てては思したらじ」 | 124 | ||
125 | と思しけれど、うちつけに目とどめきこえたまふに、御けしきなども、例ならずあくがれたるも心憂く、 | 125 | ||
126 | 「まめまめしく思しなるらむことを、つれなく戯れに言ひなしたまひけむよと、同じ筋にはものしたまへど、おぼえことに、昔よりやむごとなく聞こえたまふを、御心など移りなば、はしたなくもあべいかな。年ごろの御もてなしなどは、立ち並ぶ方なく、さすがにならひて、人に押し消たれむこと」 | 126 | ||
127 | など、人知れず思し嘆かる。 | 127 | ||
128 | 「かき絶え名残なきさまにはもてなしたまはずとも、いとものはかなきさまにて見馴れたまへる年ごろの睦び、あなづらはしき方にこそはあらめ」 | 128 | ||
129 | など、さまざまに思ひ乱れたまふに、よろしきことこそ、うち怨じなど憎からず聞こえたまへ、まめやかにつらしと思せば、色にも出だしたまはず。 | 129 | ||
130 | 端近う眺めがちに、内裏住みしげくなり、役とは御文を書きたまへば、 | 130 | ||
131 | 「げに、人の言葉むなしかるまじきなめり。けしきをだにかすめたまへかし」 | 131 | ||
132 | と、疎ましくのみ思ひきこえたまふ。 | 132 | ||
133 | 133 | |||
134 | 第二章 朝顔姫君の物語 老いてなお旧りせぬ好色心 | 134 | ||
135 | [第一段 朝顔姫君訪問の道中] | 135 | ||
136 | 夕つ方、神事なども止まりてさうざうしきに、つれづれと思しあまりて、五の宮に例の近づき参りたまふ。雪うち散りて艶なるたそかれ時に、なつかしきほどに馴れたる御衣どもを、いよいよたきしめたまひて、心ことに化粧じ暮らしたまへれば、いとど心弱からむ人はいかがと見えたり。さすがに、まかり申しはた、聞こえたまふ。 | 136 | ||
137 | 「女五の宮の悩ましくしたまふなるを、訪らひきこえになむ」 | 137 | ||
138 | とて、ついゐたまへれど、見もやりたまはず、若君をもてあそび、紛らはしおはする側目の、ただならぬを、 | 138 | ||
139 | 「あやしく、御けしきの変はれるべきころかな。罪もなしや。塩焼き衣のあまり目馴れ、見だてなく思さるるにやとて、とだえ置くを、またいかが」 | 139 | ||
140 | など聞こえたまへば、 | 140 | ||
141 | 「馴れゆくこそ、げに、憂きこと多かりけれ」 | 141 | ||
142 | とばかりにて、うち背きて臥したまへるは、見捨てて出でたまふ道、もの憂けれど、宮に御消息聞こえたまひてければ、出でたまひぬ。 | 142 | ||
143 | 「かかりけることもありける世を、うらなくて過ぐしけるよ」 | 143 | ||
144 | と思ひ続けて、臥したまへり。鈍びたる御衣どもなれど、色合ひ重なり、好ましくなかなか見えて、雪の光にいみじく艶なる御姿を見出だして、 | 144 | ||
145 | 「まことに離れまさりたまはば」 | 145 | ||
146 | と、忍びあへず思さる。 | 146 | ||
147 | 御前など忍びやかなる限りして、 | 147 | ||
148 | 「内裏より他の歩きは、もの憂きほどになりにけりや。桃園宮の心細きさまにてものしたまふも、式部卿宮に年ごろは譲りきこえつるを、今は頼むなど思しのたまふも、ことわりに、いとほしければ」 | 148 | ||
149 | など、人びとにものたまひなせど、 | 149 | ||
150 | 「いでや。御好き心の古りがたきぞ、あたら御疵なめる」 | 150 | ||
151 | 「軽々しきことも出で来なむ」 | 151 | ||
152 | など、つぶやきあへり。 | 152 | ||
153 | 153 | |||
154 | [第二段 宮邸に到着して門を入る] | 154 | ||
155 | 宮には、北面の人しげき方なる御門は、入りたまはむも軽々しければ、西なるがことことしきを、人入れさせたまひて、宮の御方に御消息あれば、「今日しも渡りたまはじ」と思しけるを、驚きて開けさせたまふ。 | 155 | ||
156 | 御門守、寒げなるけはひ、うすすき出で来て、とみにもえ開けやらず。これより他の男はたなきなるべし。ごほごほと引きて、 | 156 | ||
157 | 「錠のいといたく銹びにければ、開かず」 | 157 | ||
158 | と愁ふるを、あはれと聞こし召す。 | 158 | ||
159 | 「昨日今日と思すほどに、三年のあなたにもなりにける世かな。かかるを見つつ、かりそめの宿りをえ思ひ捨てず、木草の色にも心を移すよ」と、思し知らるる。口ずさびに、 | 159 | ||
160 | 「いつのまに蓬がもととむすぼほれ | 160 | ||
161 | 雪降る里と荒れし垣根ぞ」 | 161 | ||
162 | やや久しう、ひこしらひ開けて、入りたまふ。 | 162 | ||
163 | 163 | |||
164 | [第三段 宮邸で源典侍と出会う] | 164 | ||
165 | 宮の御方に、例の、御物語聞こえたまふに、古事どものそこはかとなきうちはじめ、聞こえ尽くしたまへど、御耳もおどろかず、ねぶたきに、宮も欠伸うちしたまひて、 | 165 | ||
166 | 「宵まどひをしはべれば、ものもえ聞こえやらず」 | 166 | ||
167 | とのたまふほどもなく、鼾とか、聞き知らぬ音すれば、よろこびながら立ち出でたまはむとするに、またいと古めかしきしはぶきうちして、参りたる人あり。 | 167 | ||
168 | 「かしこけれど、聞こし召したらむと頼みきこえさするを、世にある者とも数まへさせたまはぬになむ。院の上は、祖母殿と笑はせたまひし」 | 168 | ||
169 | など、名のり出づるにぞ、思し出づる。 | 169 | ||
170 | 源典侍といひし人は、尼になりて、この宮の御弟子にてなむ行なふと聞きしかど、今まであらむとも尋ね知りたまはざりつるを、あさましうなりぬ。 | 170 | ||
171 | 「その世のことは、みな昔語りになりゆくを、はるかに思ひ出づるも、心細きに、うれしき御声かな。親なしに臥せる旅人と、育みたまへかし」 | 171 | ||
172 | とて、寄りゐたまへる御けはひに、いとど昔思ひ出でつつ、古りがたくなまめかしきさまにもてなして、いたうすげみにたる口つき、思ひやらるる声づかひの、さすがに舌つきにて、うちされむとはなほ思へり。 | 172 | ||
173 | 「言ひこしほどに」など聞こえかかる、まばゆさよ。「今しも来たる老いのやうに」など、ほほ笑まれたまふものから、ひきかへ、これもあはれなり。 | 173 | ||
174 | 「この盛りに挑みたまひし女御、更衣、あるはひたすら亡くなりたまひ、あるはかひなくて、はかなき世にさすらへたまふもあべかめり。入道の宮などの御齢よ。あさましとのみ思さるる世に、年のほど身の残り少なげさに、心ばへなども、ものはかなく見えし人の、生きとまりて、のどやかに行なひをもうちして過ぐしけるは、なほすべて定めなき世なり」 | 174 | ||
175 | と思すに、ものあはれなる御けしきを、心ときめきに思ひて、若やぐ。 | 175 | ||
176 | 「年経れどこの契りこそ忘られね | 176 | ||
177 | 親の親とか言ひし一言」 | 177 | ||
178 | と聞こゆれば、疎ましくて、 | 178 | ||
179 | 「身を変へて後も待ち見よこの世にて | 179 | ||
180 | 親を忘るるためしありやと | 180 | ||
181 | 頼もしき契りぞや。今のどかにぞ、聞こえさすべき」 | 181 | ||
182 | とて、立ちたまひぬ。 | 182 | ||
183 | 183 | |||
184 | [第四段 朝顔姫君と和歌を詠み交わす] | 184 | ||
185 | 西面には御格子参りたれど、厭ひきこえ顔ならむもいかがとて、一間、二間は下ろさず。月さし出でて、薄らかに積もれる雪の光りあひて、なかなかいとおもしろき夜のさまなり。 | 185 | ||
186 | 「ありつる老いらくの心げさうも、良からぬものの世のたとひとか聞きし」と思し出でられて、をかしくなむ。今宵は、いとまめやかに聞こえたまひて、 | 186 | ||
187 | 「一言、憎しなども、人伝てならでのたまはせむを、思ひ絶ゆるふしにもせむ」 | 187 | ||
188 | と、おり立ちて責めきこえたまへど、 | 188 | ||
189 | 「昔、われも人も若やかに、罪許されたりし世にだに、故宮などの心寄せ思したりしを、なほあるまじく恥づかしと思ひきこえてやみにしを、世の末に、さだすぎ、つきなきほどにて、一声もいとまばゆからむ」 | 189 | ||
190 | と思して、さらに動きなき御心なれば、「あさましう、つらし」と思ひきこえたまふ。 | 190 | ||
191 | さすがに、はしたなくさし放ちてなどはあらぬ人伝ての御返りなどぞ、心やましきや。夜もいたう更けゆくに、風のけはひ、はげしくて、まことにいともの心細くおぼゆれば、さまよきほど、おし拭ひたまひて、 | 191 | ||
192 | 「つれなさを昔に懲りぬ心こそ | 192 | ||
193 | 人のつらきに添へてつらけれ | 193 | ||
194 | 心づからの」 | 194 | ||
195 | とのたまひすさぶるを、 | 195 | ||
196 | 「げに」 | 196 | ||
197 | 「かたはらいたし」 | 197 | ||
198 | と、人びと、例の、聞こゆ。 | 198 | ||
199 | 「あらためて何かは見えむ人のうへに | 199 | ||
200 | かかりと聞きし心変はりを | 200 | ||
201 | 昔に変はることは、ならはず」 | 201 | ||
202 | など聞こえたまへり。 | 202 | ||
203 | 203 | |||
204 | [第五段 朝顔姫君、源氏の求愛を拒む] | 204 | ||
205 | いふかひなくて、いとまめやかに怨じきこえて出でたまふも、いと若々しき心地したまへば、 | 205 | ||
206 | 「いとかく、世の例になりぬべきありさま、漏らしたまふなよ。ゆめゆめ。いさら川などもなれなれしや」 | 206 | ||
207 | とて、せちにうちささめき語らひたまへど、何ごとにかあらむ。人びとも、 | 207 | ||
208 | 「あな、かたじけな。あながちに情けおくれても、もてなしきこえたまふらむ」 | 208 | ||
209 | 「軽らかにおし立ちてなどは見えたまはぬ御けしきを。心苦しう」 | 209 | ||
210 | と言ふ。 | 210 | ||
211 | げに、人のほどの、をかしきにも、あはれにも、思し知らぬにはあらねど、 | 211 | ||
212 | 「もの思ひ知るさまに見えたてまつるとて、おしなべての世の人のめできこゆらむ列にや思ひなされむ。かつは、軽々しき心のほども見知りたまひぬべく、恥づかしげなめる御ありさまを」と思せば、「なつかしからむ情けも、いとあいなし。よその御返りなどは、うち絶えで、おぼつかなかるまじきほどに聞こえたまひ、人伝ての御いらへ、はしたなからで過ぐしてむ。年ごろ、沈みつる罪失ふばかり御行なひを」とは思し立てど、「にはかにかかる御ことをしも、もて離れ顔にあらむも、なかなか今めかしきやうに見え聞こえて、人のとりなさじやは」と、世の人の口さがなさを思し知りにしかば、かつ、さぶらふ人にもうちとけたまはず、いたう御心づかひしたまひつつ、やうやう御行なひをのみしたまふ。 | 212 | ||
213 | 御兄弟の君達あまたものしたまへど、ひとつ御腹ならねば、いとうとうとしく、宮のうちいとかすかになり行くままに、さばかりめでたき人の、ねむごろに御心を尽くしきこえたまへば、皆人、心を寄せきこゆるも、ひとつ心と見ゆ。 | 213 | ||
214 | 214 | |||
215 | 第三章 紫の君の物語 冬の雪の夜の孤影 | 215 | ||
216 | [第一段 紫の君、嫉妬す] | 216 | ||
217 | 大臣は、あながちに思しいらるるにしもあらねど、つれなき御けしきのうれたきに、負けてやみなむも口惜しく、げにはた、人の御ありさま、世のおぼえことに、あらまほしく、ものを深く思し知り、世の人の、とあるかかるけぢめも聞き集めたまひて、昔よりもあまた経まさりて思さるれば、今さらの御あだけも、かつは世のもどきをも思しながら、 | 217 | ||
218 | 「むなしからむは、いよいよ人笑へなるべし。いかにせむ」 | 218 | ||
219 | と、御心動きて、二条院に夜離れ重ねたまふを、女君は、たはぶれにくくのみ思す。忍びたまへど、いかがうちこぼるる折もなからむ。 | 219 | ||
220 | 「あやしく例ならぬ御けしきこそ、心得がたけれ」 | 220 | ||
221 | とて、御髪をかきやりつつ、いとほしと思したるさまも、絵に描かまほしき御あはひなり。 | 221 | ||
222 | 「宮亡せたまひて後、主上のいとさうざうしげにのみ世を思したるも、心苦しう見たてまつり、太政大臣もものしたまはで、見譲る人なきことしげさになむ。このほどの絶え間などを、見ならはぬことに思すらむも、ことわりに、あはれなれど、今はさりとも、心のどかに思せ。おとなびたまひためれど、まだいと思ひやりもなく、人の心も見知らぬさまにものしたまふこそ、らうたけれ」 | 222 | ||
223 | など、まろがれたる御額髪、ひきつくろひたまへど、いよいよ背きてものも聞こえたまはず。 | 223 | ||
224 | 「いといたく若びたまへるは、誰がならはしきこえたるぞ」 | 224 | ||
225 | とて、「常なき世に、かくまで心置かるるもあぢきなのわざや」と、かつはうち眺めたまふ。 | 225 | ||
226 | 「斎院にはかなしごと聞こゆるや、もし思しひがむる方ある。それは、いともて離れたることぞよ。おのづから見たまひてむ。昔よりこよなうけどほき御心ばへなるを、さうざうしき折々、ただならで聞こえ悩ますに、かしこもつれづれにものしたまふ所なれば、たまさかの応へなどしたまへど、まめまめしきさまにもあらぬを、かくなむあるとしも、愁へきこゆべきことにやは。うしろめたうはあらじとを、思ひ直したまへ」 | 226 | ||
227 | など、日一日慰めきこえたまふ。 | 227 | ||
228 | 228 | |||
229 | [第二段 夜の庭の雪まろばし] | 229 | ||
230 | 雪のいたう降り積もりたる上に、今も散りつつ、松と竹とのけぢめをかしう見ゆる夕暮に、人の御容貌も光まさりて見ゆ。 | 230 | ||
231 | 「時々につけても、人の心を移すめる花紅葉の盛りよりも、冬の夜の澄める月に、雪の光りあひたる空こそ、あやしう、色なきものの、身にしみて、この世のほかのことまで思ひ流され、おもしろさもあはれさも、残らぬ折なれ。すさまじき例に言ひ置きけむ人の心浅さよ」 | 231 | ||
232 | とて、御簾巻き上げさせたまふ。 | 232 | ||
233 | 月は隈なくさし出でて、ひとつ色に見え渡されたるに、しをれたる前栽の蔭心苦しう、遣水もいといたうむせびて、池の氷もえもいはずすごきに、童女下ろして、雪まろばしせさせたまふ。 | 233 | ||
234 | をかしげなる姿、頭つきども、月に映えて、大きやかに馴れたるが、さまざまの衵乱れ着、帯しどけなき宿直姿、なまめいたるに、こやなうあまれる髪の末、白きにはましてもてはやしたる、いとけざやかなり。 | 234 | ||
235 | 小さきは、童げてよろこび走るに、扇なども落して、うちとけ顔をかしげなり。 | 235 | ||
236 | いと多うまろばさむと、ふくつけがれど、えも押し動かさでわぶめり。かたへは、東のつまなどに出でゐて、心もとなげに笑ふ。 | 236 | ||
237 | 237 | |||
238 | [第三段 源氏、往古の女性を語る] | 238 | ||
239 | 「一年、中宮の御前に雪の山作られたりし、世ぬ古りたることなれど、なほめづらしくもはかなきことをしなしたまへりしかな。何の折々につけても、口惜しう飽かずもあるかな。 | 239 | ||
240 | いとけどほくもてなしたまひて、くはしき御ありさまを見ならしたてまつりしことはなかりしかど、御交じらひのほどに、うしろやすきものには思したりきかし。 | 240 | ||
241 | うち頼みきこえて、とあることかかる折につけて、何ごとも聞こえかよひしに、もて出でてらうらうじきことも見えたまはざりしかど、いふかひあり、思ふさまに、はかなきことわざをもしなしたまひしはや。世にまた、さばかりのたぐひありなむや。 | 241 | ||
242 | やはらかにおびれたるものから、深うよしづきたるところの、並びなくものしたまひしを、君こそは、さいへど、紫のゆゑ、こよなからずものしたまふめれど、すこしわづらはしき気添ひて、かどかどしさのすすみたまへるや、苦しからむ。 | 242 | ||
243 | 前斎院の御心ばへは、またさまことにぞ見ゆる。さうざうしきに、何とはなくとも聞こえあはせ、われも心づかひせらるべきあたり、ただこの一所や、世に残りたまへらむ」 | 243 | ||
244 | とのたまふ。 | 244 | ||
245 | 「尚侍こそは、らうらうじくゆゑゆゑしき方は、人にまさりたまへれ。浅はかなる筋など、もて離れたまへりける人の御心を、あやしくもありけることどもかな」 | 245 | ||
246 | とのたまへば、 | 246 | ||
247 | 「さかし。なまめかしう容貌よき女の例には、なほ引き出でつべき人ぞかし。さも思ふに、いとほしく悔しきことの多かるかな。まいて、うちあだけ好きたる人の、年積もりゆくままに、いかに悔しきこと多からむ。人よりはことなき静けさ、と思ひしだに」 | 247 | ||
248 | など、のたまひ出でて、尚侍の君の御ことにも、涙すこしは落したまひつ。 | 248 | ||
249 | 「この、数にもあらずおとしめたまふ山里の人こそは、身のほどにはややうち過ぎ、ものの心など得つべけれど、人よりことなべきものなれば、思ひ上がれるさまをも、見消ちてはべるかな。いふかひなき際の人はまだ見ず。人は、すぐれたるは、かたき世なりや。 | 249 | ||
250 | 東の院にながむる人の心ばへこそ、古りがたくらうたけれ。さはた、さらにえあらぬものを、さる方につけての心ばせ、人にとりつつ見そめしより、同じやうに世をつつましげに思ひて過ぎぬるよ。今はた、かたみに背くべくもあらず、深うあはれと思ひはべる」 | 250 | ||
251 | など、昔今の御物語に夜更けゆく。 | 251 | ||
252 | 252 | |||
253 | [第四段 藤壷、源氏の夢枕に立つ] | 253 | ||
254 | 月いよいよ澄みて、静かにおもしろし。女君、 | 254 | ||
255 | 「氷閉ぢ石間の水は行きなやみ | 255 | ||
256 | 空澄む月の影ぞ流るる」 | 256 | ||
257 | 外を見出だして、すこし傾きたまへるほど、似るものなくうつくしげなり。髪ざし、面様の、恋ひきこゆる人の面影にふとおぼえて、めでたければ、いささか分くる御心もとり重ねつべし。鴛鴦のうち鳴きたるに、 | 257 | ||
258 | 「かきつめて昔恋しき雪もよに | 258 | ||
259 | あはれを添ふる鴛鴦の浮寝か」 | 259 | ||
260 | 入りたまひても、宮の御ことを思ひつつ大殿籠もれるに、夢ともなくほのかに見たてまつるを、いみじく恨みたまへる御けしきにて、 | 260 | ||
261 | 「漏らさじとのたまひしかど、憂き名の隠れなかりければ、恥づかしう、苦しき目を見るにつけても、つらくなむ」 | 261 | ||
262 | とのたまふ。御応へ聞こゆと思すに、襲はるる心地して、女君の、 | 262 | ||
263 | 「こは、など、かくは」 | 263 | ||
264 | とのたまふに、おどろきて、いみじく口惜しく、胸のおきどころなく騒げば、抑へて、涙も流れ出でにけり。今も、いみじく濡らし添へたまふ。 | 264 | ||
265 | 女君、いかなることにかと思すに、うちもみじろかで臥したまへり。 | 265 | ||
266 | 「とけて寝ぬ寝覚さびしき冬の夜に | 266 | ||
267 | むすぼほれつる夢の短さ」 | 267 | ||
268 | 268 | |||
269 | [第五段 源氏、藤壷を供養す] | 269 | ||
270 | なかなか飽かず、悲しと思すに、とく起きたまひて、さとはなくて、所々に御誦経などせさせたまふ。 | 270 | ||
271 | 「苦しき目見せたまふと、恨みたまへるも、さぞ思さるらむかし。行なひをしたまひ、よろづに罪軽げなりし御ありさまながら、この一つことにてぞ、この世の濁りをすすいたまはざらむ」 | 271 | ||
272 | と、ものの心を深く思したどるに、いみじく悲しければ、 | 272 | ||
273 | 「何わざをして、知る人なき世界におはすらむを、訪らひきこえに参うでて、罪にも代はりきこえばや」 | 273 | ||
274 | など、つくづくと思す。 | 274 | ||
275 | 「かの御ために、とり立てて何わざをもしたまふむは、人とがめきこえつべし。内裏にも、御心の鬼に思すところやあらむ」 | 275 | ||
276 | と、思しつつむほどに、阿弥陀仏を心にかけて念じたてまつりたまふ。「同じ蓮に」とこそは、 | 276 | ||
277 | 「亡き人を慕ふ心にまかせても | 277 | ||
278 | 影見ぬ三つの瀬にや惑はむ」 | 278 | ||
279 | と思すぞ、憂かりけるとや。 | 279 | ||
280 | 280 | |||
281 | 【出典】 | 281 | ||
282 | 出典1 寿則多辱(荘子-天地)(戻) | 282 | ||
c2-1 | 283-284 | <A NAME="no2">出典2</A> 恋せじと御禊は神もうけずかと人を忘るる罪深くして(源氏釈所引、出典未詳)<BR>《改行》 恋せじと御手洗河にせし御禊神はうけずもなりにけるかな(古今集恋一-五〇一 読人しらず)<A HREF="#te2">(戻)</A><BR> | 283 | <A NAME="no2">出典2</A> 恋せじと御禊は神もうけずかと人を忘るる罪深くして(源氏釈所引、出典未詳)恋せじと御手洗河にせし御禊神はうけずもなりにけるかな(古今集恋一-五〇一 読人しらず)<A HREF="#te2">(戻)</A><BR> |
285 | 出典3 君が門今ぞ過ぎ行く出でて見よ恋する人のなれる姿を(源氏釈所引、出典未詳)(戻) | 284 | ||
286 | 出典4 須磨の浦の塩焼き衣馴れ行けば憂き頼みこそなりまさりけり(源氏釈所引、出典未詳)(戻) | 285 | ||
287 | 出典5 馴れ行けば憂き世なればや須磨の海人の塩焼衣まどほなるらむ(新古今集恋三-一二一〇 徽子女王)(戻) | 286 | ||
288 | 出典6 しなてるや片岡山に飯に飢ゑて臥せる旅人あはれ親なし(拾遺集哀傷-一三五〇 聖徳太子)(戻) | 287 | ||
289 | 出典7 身を憂しと言ひ来しほどに今日はまた人の上とも嘆くべきかな(源氏釈所引、出典未詳)(戻) | 288 | ||
290 | 出典8 親の親と思はましかば問ひてまし我が子の子には(拾遺集雑下-五四五 源重之母)(戻) | 289 | ||
291 | 出典9 今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな(後拾遺集恋三-七五〇 藤原道雅)(戻) | 290 | ||
292 | 出典10 恋しきも心づからのわざなればおきどころなくもてわづらふ(中務集-二四九)(戻) | 291 | ||
293 | 出典11 犬上の鳥籠の山なる名取川いさと答へよ我が名洩すな(古今集墨滅歌-一一〇八 読人しらず)(戻) | 292 | ||
294 | 出典12 ありぬやと試みがてらあひ見ねば戯れにくきまでぞ恋しき(古今集俳諧歌-一〇二五 読人しらず)(戻) | 293 | ||
295 | 出典13 春秋に思ひ乱れて分きかねつ時につけつつ移る心は(拾遺集雑下-五〇九 紀貫之)(戻) | 294 | ||
296 | 出典14 遺愛寺鐘*枕聴 香鑪峯雪撥簾看(白氏文集巻十六、*=埼-土,+欠<右>)(戻) | 295 | ||
297 | 296 | |||
298 | 【校訂】 | 297 | ||
299 | 備考--(/) ミセケチ--$ 抹消--# 補入--+ 傍書--= ナゾリ--& 独自異文等--* 朱筆--<朱> 不明--△ | 298 | ||
300 | 校訂1 立ち返り--たちか(か/$か)へり(戻) | 299 | ||
301 | 校訂2 やうにや」と--やうに(に/+や<朱>)と(戻) | 300 | ||
302 | 校訂3 似つかはしき--につら(ら/$か)はしき(戻) | 301 | ||
303 | 校訂4 書き紛らはし--かき(き/+まき)らはし(戻) | 302 | ||
304 | 校訂5 宣旨--せむ(む/$)し(戻) | 303 | ||
305 | 校訂6 前斎院を--前斎院(院/+を<朱>)(戻) | 304 | ||
306 | 校訂7 御けしきの--御けしきの(の/+の$<朱>)(戻) | 305 | ||
307 | 校訂8 たまひて--たま(ま/+ひ)て(戻) | 306 | ||
308 | 校訂9 三年--みそ(そ/$<朱>)とせ(戻) | 307 | ||
309 | 校訂10 出づる--いつ(つ/+る)(戻) | 308 | ||
310 | 校訂11 ほほ笑まれ--をほ(をほ/$ほゝ)ゑまれ(戻) | 309 | ||
311 | 校訂12 心ばへ--こ(こ/+こ)ろはへ(戻) | 310 | ||
312 | 校訂13 光りあひて--ひかり△(△/#)あひ(ひ/+て)(戻) | 311 | ||
313 | 校訂14 げに--け(け/+に)(戻) | 312 | ||
314 | 校訂15 御あだけ--御仇(仇/$あたけ)(戻) | 313 | ||
315 | 校訂16 とて--と(と/+て)(戻) | 314 | ||
316 | 校訂17 心苦しう--心くる(る/+し<朱>)う(戻) | 315 | ||
317 | 校訂18 なむや--*なむ(戻) | 316 | ||
318 | 校訂19 うつくしげ--うつ(つ/+く<朱>)しけ(戻) | 317 | ||
319 | 校訂20 すすい--すゝ(ゝ/$す<朱>)い(戻) | 318 | ||
320 | 校訂21 代はりきこえ--かはりき(き/$)きこえ(戻) | 319 | ||
321 | 320 | |||
322 | 源氏物語の世界ヘ | 321 | ||
323 | ローマ字版 | 322 | ||
324 | 現代語訳 | 323 | ||
325 | 注釈 | 324 | ||
326 | 大島本 | 325 | ||
327 | 自筆本奥入 | 326 | ||
328 | 327 | |||
329 | 328 | |||
330 | 329 | |||
331 | 330 |