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7 | 渋谷栄一注釈(ver.1-1-2) | 7 | ||
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9 | 紅梅 | 9 | ||
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11 | [底本] | 11 | ||
12 | 財団法人古代学協会・古代学研究所編 角田文衛・室伏信助監修『大島本 源氏物語』第八巻 一九九六年 角川書店 | 12 | ||
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14 | [参考文献] | 14 | ||
15 | 池田亀鑑編著『源氏物語大成』第三巻「校異篇」一九五六年 中央公論社 | 15 | ||
16 | 16 | |||
17 | 阿部秋生・秋山 虔・今井源衛・鈴木日出男校注・訳『古典セレクション 源氏物語』第十二巻 一九九八年 小学館 | 17 | ||
18 | 柳井 滋・室伏信助・大朝雄二・鈴木日出男・藤井貞和・今西祐一郎校注『新日本古典文学大系 源氏物語』第四巻 一九九六年 岩波書店 | 18 | ||
19 | 阿部秋生・秋山 虔・今井源衛・鈴木日出男校注・訳『完訳日本の古典 源氏物語』第八巻 一九八七年 小学館 | 19 | ||
20 | 石田穣二・清水好子校注『新潮日本古典集成 源氏物語』第六巻 一九八二年 新潮社 | 20 | ||
21 | 阿部秋生・秋山 虔・今井源衛校注・訳『日本古典文学全集 源氏物語』第五巻 一九七五年 小学館 | 21 | ||
22 | 玉上琢弥著『源氏物語評釈』第九巻 一九六七年 角川書店 | 22 | ||
23 | 山岸徳平校注『日本古典文学大系 源氏物語』第四巻 一九六二年 岩波書店 | 23 | ||
24 | 池田亀鑑校注『日本古典全書 源氏物語』第五巻 一九五四年 朝日新聞社 | 24 | ||
25 | 25 | |||
26 | 伊井春樹編『源氏物語引歌索引』一九七七年 笠間書院 | 26 | ||
27 | 榎本正純篇著『源氏物語の草子地 諸注と研究』一九八二年 笠間書院 | 27 | ||
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29 | 第一章 紅梅大納言家の物語 娘たちの結婚を思案 | 29 | ||
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32 | 32 | |||
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36 | 第二章 匂兵部卿の物語 宮の御方に執心 | 36 | ||
37 | 37 | |||
38 | 38 | |||
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40 | 40 | |||
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44 | 44 | |||
45 | 第一章 紅梅大納言家の物語 娘たちの結婚を思案 | 45 | ||
46 | [第一段 按察使大納言家の家族] | 46 | ||
47 | 【そのころ】−『集成』は「漠然と時を指定する書き方。物語の冒頭の形式「今は昔」「昔」などに准ずるもので、後の橋姫、宿木、手習に同じ書き出しが見られる」。『完訳』は「語り出しの常套句。後文から、前巻より三、四年後と分る」。『新大系』は「匂宮巻と同じころで、夕霧右大臣の時代。「その比」で始まる巻として、他に橋姫・宿木・手習巻があり、続篇物語の際立った特徴。前帖に対して全く新しい人間関係の提示の際の常套句」と注す。 | 47 | ||
48 | 【さしつぎよ】−「よ」間投助詞。語り手の口吻。 | 48 | ||
49 | 【童より】−「賢木」巻に初登場、以後、「行幸」「夕霧」巻にも登場。 | 49 | ||
50 | 【御おぼえ】−帝の御信望。 | 50 | ||
51 | 【もとよりのは】−系図不詳の人。 | 51 | ||
52 | 【後の太政大臣】−鬚黒。彼の太政大臣への昇進と死去の年月は不明。 | 52 | ||
53 | 【式部卿宮にて】−祖父の式部卿宮が引き取って、宮家の姫君として、の意。 | 53 | ||
54 | 【故兵部卿親王に】−蛍兵部卿宮に。 | 54 | ||
c1 | 55 | 【女二人のみぞ】−大君(麗景殿女御)と中の君。<BR> | 55 | 【二人のみぞ】−大君(麗景殿女御)と中の君。<BR> |
56 | 【男君一人】−大夫の君と呼称される。 | 56 | ||
57 | 【故宮の】−故蛍兵部卿宮と真木柱姫君との間に。 | 57 | ||
58 | 【女君一所】−宮の御方と呼称される。 | 58 | ||
59 | 【うるはしうもあらぬ心ばへ】−『集成』は「きれい事では割り切れぬ思い」。『完訳』は「公正に物事を処理できぬ身びいき。嫉妬し不信を抱き合う」と注す。 | 59 | ||
60 | 【わが御方ざまに苦しかるべきことをも】−連れ子の宮の御方に関する事。 | 60 | ||
61 | 61 | |||
62 | [第二段 按察使大納言家の三姫君] | 62 | ||
63 | 【父宮のおはせぬ心苦しきやうなれど】−宮の御方には父螢兵部卿宮がいない気の毒さ。 | 63 | ||
64 | 【こなたかなたの御宝物】−父蛍宮や母方の曾祖父式部卿宮から贈られた宝物。 | 64 | ||
65 | 【内裏春宮より】−今上帝(朱雀院の皇子)と東宮(今上の第一皇子、母明石の中宮)。以下「何の本意かはあらむ」まで、紅梅大納言の心中。 | 65 | ||
c1 | 66 | 【兵部卿の宮のさも思しよらば】−紅梅大納言の心中。<BR> | 66 | 【兵部卿宮の、さも思したらば】−紅梅大納言の心中。<BR> |
67 | 【この若君を】−紅梅大納言と真木柱の子、大夫の君。大君や中君とは異腹の兄弟。 | 67 | ||
68 | 【内裏にてなど見つけたまふ時は】−主語は匂宮。 | 68 | ||
69 | 【せうとを見て】−以下「大納言に申せよ」まで、匂宮の詞。姉にも逢いたい、の意。大夫の君には異腹の姉の大君(東宮の麗景殿女御)、中君と同父の姉の宮の御方とがいる。匂宮は連れ子の宮の御方に関心がある。 | 69 | ||
70 | 【いとかひあり】−紅梅大納言の心中。匂宮が中君に関心を寄せているものと思い喜ぶ。しかし、匂宮は宮の御方に関心がある。 | 70 | ||
71 | 【人に劣らむ宮仕ひよりは】−以下「宮の御さまなり」まで、紅梅大納言の詞。 | 71 | ||
72 | 【春宮の御ことをいそぎたまひて】−大君の東宮への入内。 | 72 | ||
73 | 【春日の神の御ことわりも】−以下「慰めのこともあらなむ」まで、紅梅大納言の心中。藤原氏から皇后が立后するという神託。 | 73 | ||
74 | 【故大臣の院の女御】−紅梅大納言の父、故太政大臣の娘の冷泉帝の弘徽殿女御は、源氏の養女の秋好中宮に立后された悔しい思いがある。 | 74 | ||
75 | 【北の方添ひて】−紅梅大納言の北の方、真木柱。継母が後見。 | 75 | ||
76 | 76 | |||
77 | [第三段 宮の御方の魅力] | 77 | ||
78 | 【西の御方は】−中君。 | 78 | ||
79 | 【一つに慣らひたまひて】−姉の大君と一緒にいることに慣れていた。 | 79 | ||
80 | 【東の姫君も】−宮の御方。継母の真木柱と先夫蛍兵部卿宮との間の娘、連れ子。 | 80 | ||
81 | 【こなたを師のやうに】−宮の御方を師匠のようにして。 | 81 | ||
82 | 【誰れも】−大君や中君をさす。 | 82 | ||
83 | 【もの恥ぢを世の常ならずしたまひて】−主語は宮の御方。以下、宮の御方の性格描写が続く。 | 83 | ||
84 | 【わが方ざまをのみ思ひ急ぐやうなるも心苦しなど思して】−主語は紅梅大納言。 | 84 | ||
85 | 【さるべからむさまに】−以下「仕うまつらめ」まで、紅梅大納言の詞。 | 85 | ||
86 | 【さらにさやうの】−以下「過ぐしたまはなむ」まで、母北の方真木柱の詞。 | 86 | ||
87 | 【世にあらむ限りは】−自分が生きているうちは。 | 87 | ||
88 | 【世を背く方にても】−宮の御方が。『集成』は「出家して尼になるなりして、それなりに、人の物笑いになるような、軽はずみな失態を犯すことなくお過しになってほしいものです。つまらぬ男と浮き名の立つようなことはあってほしくない、と言う。父兵部卿の宮がいないというひけ目が、母にも適当な縁組を断念させているのであろう」と注す。 | 88 | ||
89 | 【御心ばせの思ふやうなることをぞ】−宮の御方のすぐれた性質をいう。 | 89 | ||
90 | 【いづれも分かず親がりたまへど】−紅梅大納言は実子も連れ子も同じように扱う。 | 90 | ||
91 | 【上おはせぬほどは】−以下「心憂くこそ」まで、紅梅大納言の詞。母上は大君と共に宮中にいる。 | 91 | ||
92 | 【この君にえしも】−以下「ありぬべかめり」まで、紅梅大納言の心中。 | 92 | ||
c1 | 93 | 【世の中広きうちは】−『集成』は「この広い世間の内は、気を許せないものなのだ。どんな強敵がいるか分らない、意」。『完訳』は「世間付き合いの多い宮中では。後宮には予測しがたい、すぐれた妃の出現しがちなことを危ぶむ」と注す。<BR> | 93 | 【世の中の広きうちは】−『集成』は「この広い世間の内は、気を許せないものなのだ。どんな強敵がいるか分らない、意」。『完訳』は「世間付き合いの多い宮中では。後宮には予測しがたい、すぐれた妃の出現しがちなことを危ぶむ」と注す。<BR> |
94 | 94 | |||
95 | [第四段 按察使大納言の音楽談義] | 95 | ||
96 | 【月ごろ何となく】−以下「御琴参れ」まで、紅梅大納言の詞。 | 96 | ||
97 | 【琵琶を心に入れてはべる】−中君は宮の御方から琵琶を習っている。『源氏物語』では琵琶は皇族の血を引く人がよく弾く楽器として登場。源典侍、明石御方、蛍兵部卿宮、宇治大君など。 | 97 | ||
98 | 【うちとけても遊ばさねど】−主語は、あなた宮の御方。敬語表現。 | 98 | ||
99 | 【昔おぼえはべる】−『集成』は「昔の世の音色そのままと思われます。昔の名手にも劣らないと、ほめる。尚古思想である」。『完訳』は「往年の琵琶の第一人者は宮の御方の実父蛍宮。ここはそれを回顧しない」と注す。 | 99 | ||
100 | 【この御琴の音こそ】−あなたの琴の音色は。琴は総称、琵琶をさす。 | 100 | ||
101 | 【隠れたてまつるも】−紅梅大納言に対しての敬意。 | 101 | ||
102 | 【さぶらふ人さへかくもてなすがやすからぬ】−紅梅大納言の詞。『完訳』は「宮の御方への当てつけがましい言葉」と注す。 | 102 | ||
103 | 103 | |||
104 | 第二章 匂兵部卿の物語 宮の御方に執心 | 104 | ||
105 | [第一段 按察使大納言、匂宮に和歌を贈る] | 105 | ||
106 | 【若君】−紅梅大納言と真木柱の子、宮の御方の異父弟。 | 106 | ||
107 | 【麗景殿に】−紅梅大納言の大君。 | 107 | ||
108 | 【譲りきこえて】−以下「聞こえよ」まで、紅梅大納言の詞。若君への伝言。「譲りきこえ」の相手は、大君に付き添っている北の方。 | 108 | ||
109 | 【笛すこし】−以下「若き笛を」まで、紅梅大納言の詞。 | 109 | ||
110 | 【かたはらいたしや】−『完訳』は「卑下しながらも自慢する」と注す。 | 110 | ||
111 | 【若き笛を】−「を」間投助詞、詠嘆の気持ち。 | 111 | ||
112 | 【双調吹かせたまふ】−「せ」使役の助動詞。紅梅大納言が若君に。 | 112 | ||
113 | 【けしうはあらずなりゆくは】−以下「掻き合はせさせたまへ」まで、紅梅大納言の詞、後半は宮の御方への詞。 | 113 | ||
114 | 【このわたりにて】−宮の御方をさす。 | 114 | ||
115 | 【皮笛ふつつかに馴れたる声して】−主語は紅梅大納言。口笛を吹く。 | 115 | ||
116 | 【御前の花】−以下「知る人ぞ知る」まで、大納言の若君(大夫の君)への詞。 | 116 | ||
117 | 【知る人ぞ知る】−『源氏釈』は「君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る」(古今集春上、三八、紀友則)を指摘。 | 117 | ||
118 | 【あはれ光る源氏】−以下「とこそおぼえはべれ」まで、大納言の詞。 | 118 | ||
119 | 【この宮たちを】−匂宮や薫。 | 119 | ||
120 | 【なほたぐひあらじ】−源氏をさす。 | 120 | ||
c1 | 121 | 【ついでのしのびがたきにや】−語り手の推測。<BR> | 121 | 【ついでの忍びがたきにや】−語り手の推測。<BR> |
122 | 【いかがはせむ】−以下「聞こえをかさむかし」まで、大納言の詞。 | 122 | ||
123 | 【心ありて風の匂はす園の梅にまづ鴬の訪はずやあるべき】−大納言の詠歌。『完訳』は「「梅」は大納言の中の君、「鴬」は匂宮。二人の縁組を望む歌」と注す。『河海抄』は「あらたまの年行きかへり春立たばまづ我が家戸に鴬は鳴け」(万葉集二十、大伴家持)を指摘。『休聞抄』は「花の香を風の便りにたぐへてぞ鴬誘ふしるべにやせむ」(古今集春上、一三、紀友則)を指摘。 | 123 | ||
124 | 124 | |||
125 | [第二段 匂宮、若君と語る] | 125 | ||
126 | 【殿上人あまた御送りに参る中に】−殿上人が匂宮を送る。 | 126 | ||
127 | 【見つけたまひて】−匂宮が若君を。 | 127 | ||
128 | 【昨日はなど】−以下「参りつるぞ」まで、匂宮の詞。 | 128 | ||
129 | 【疾くまかではべりにし】−以下「参りつるや」まで、若君の詞。 | 129 | ||
130 | 【内裏ならで】−以下「集まる所ぞ」まで、匂宮の詞。 | 130 | ||
131 | 【心やすき所にも】−匂宮の私邸の二条院。 | 131 | ||
132 | 【春宮には】−以下「人悪ろかめり」まで、匂宮の詞。 | 132 | ||
c2 | 133-134 | 【まつはさせたまへりしこそ】−以下「御前にはしも」まで、若君の詞。<BR>《改行》 給へりし(一四五四J)−給し大御横陽池肖柏本と三条西【我をば人げなしと】−以下「語らひきこえよ」まで、匂宮の詞。主語は大君。<BR> | 133-134 | 【まつはさせたまひしこそ】−以下「御前にはしも」まで、若君の詞。<BR>【たまひし】−給し大御横陽池肖柏本と三条西《改行》 【我をば人げなしと】−以下「語らひきこえよ」まで、匂宮の詞。主語は大君。<BR> |
135 | 【思ひ離れたるとな】−「とな」は、「と」格助詞、引用の意と「な」終助詞、詠嘆の意。 | 135 | ||
c1 | 136 | 【古めかしき同じ筋にて東ときこゆなるは】−『集成』は「世間にもてはやされぬ同じ宮家で、「東」とか、申し上げる方は」。『完訳』は「わたしと同じ古めかしい皇族筋の、東の君と申し上げるというお方が」と訳す。<BR> | 136 | 【古めかしき同じ筋にて、東と聞こゆなるは】−『集成』は「世間にもてはやされぬ同じ宮家で、「東」とか、申し上げる方は」。『完訳』は「わたしと同じ古めかしい皇族筋の、東の君と申し上げるというお方が」と訳す。<BR> |
137 | 【この花を】−紅梅。 | 137 | ||
c1 | 138 | 【怨みて後ならましかば】−匂宮の心。『異本紫明抄』は「恨みての後さへ人のつらからばいかにいひてかねをもなかまし」(拾遺集恋五、九八五、読人しらず)を引歌として指摘。<BR> | 138 | 【怨みてのちならましかば】−匂宮の心。『異本紫明抄』は「恨みての後さへ人のつらからばいかにいひてかねをもなかまし」(拾遺集恋五、九八五、読人しらず)を引歌として指摘。<BR> |
139 | 【園に匂へる紅の】−以下「咲きけるかな」まで、匂宮の詞。『異本紫明抄』は「紅に色をばかへて梅の花香にぞことごと匂はざりける」(後撰集春上、四四、躬恒)。『源注拾遺』は「梅の花香はことごとに匂はねど薄く濃くこそ色は咲きけれ」(後拾遺集春上、五四、清原元輔)を引歌として指摘する。 | 139 | ||
140 | 140 | |||
141 | [第三段 匂宮、宮の御方を思う] | 141 | ||
142 | 【今宵は宿直なめりやがてこなたにを】−匂宮の詞。若君の装束を見ていう。 | 142 | ||
143 | 【この花の主人はなど春宮には移ろひたまはざりし】−匂宮の詞。『集成』は「大納言は、中の君を(私でなく)どうして東宮にさし上げる気におなりでなかったのだろう。「花」は紅梅(中の君)、その「主人(あるじ)」は、大納言と見るべきであろう」。『完訳』は「宮の御方はなぜ東宮に参らないのか」と注す。『河海抄』は「春来てぞ人もとひける山里は花こそやどの主人なりけれ」(拾遺集雑春、一〇一五、右衛門督公任)。『孟津抄』は「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花主人なしとて春を忘るな」(拾遺集雑春、一〇〇六、菅原道真)「菊の露わかゆばかりに袖濡れて花の主人に千代は譲らむ」(紫式部集)を引歌として指摘。「花」「移ろふ」は縁語。 | 143 | ||
144 | 【知らず心知らむ人になどこそ聞きはべりしか】−若君の返事。『源氏釈』は「あたら夜の月と花とを同じくは心知れらむ人に見せばや」(後撰集春下、一〇三、源信明)。『花鳥余情』は「色も香もまづ我が宿の梅をこそ心知れらむ人は見に来め」(信明集)を引歌として指摘する。 | 144 | ||
145 | 【わが方ざまに】−実の娘本意に、の意。 | 145 | ||
146 | 【花の香に誘はれぬべき身なりせば風のたよりを過ぐさましやは】−匂宮の大納言の贈歌への返歌。『集成』は「一応卑下して見せた体。贈歌と同じ『古今集』の歌(花の香を風のたよりにたぐへてぞ鴬さそふしるべにはやる)による」。『完訳』は「不似合いな自分だからとして断った歌」と注す。 | 146 | ||
147 | 【なほ今は翁どもに】−以下「忍びやかに」まで、匂宮の詞。こっそりと宮の御方にわたりをつけてほしい、意。 | 147 | ||
148 | 【東のをば】−宮の御方をさす。 | 148 | ||
149 | 【なかなか異方の姫君は】−異腹の大君、中君をさす。 | 149 | ||
150 | 【いと重りかにあらまほしう】−宮の御方の性質をさす。 | 150 | ||
151 | 【かひあるさまにて見たてまつらばや】−若君の心。宮の御方と匂宮の結婚を望む。 | 151 | ||
c1 | 152 | 【東宮の御方】−紅梅大納言の大君。麗景殿女御。<BR> | 152 | 【春宮の御方】−紅梅大納言の大君。麗景殿女御。<BR> |
153 | 【この宮をだに気近くて見たてまつらばや】−若君の心中。匂宮を姉宮の御方の婿君として拝したい、意。 | 153 | ||
154 | 154 | |||
155 | [第四段 按察使大納言と匂宮、和歌を贈答] | 155 | ||
c1 | 156 | 【これは昨日の御返なれば見せたてまつる】−『集成』は「心進まぬながら、の気持」と注す。<BR> | 156 | 【これは、昨日の御返りなれば見せたてまつる】−『集成』は「心進まぬながら、の気持」と注す。<BR> |
157 | 【ねたげにものたまへるかな】−以下「見所少なくやならまし」まで、大納言の詞。 | 157 | ||
158 | 【あまり好きたる方にすすみたまへるを】−『集成』は「あまりに風流好みの度が過ぎていらっしゃるのを」。『完訳』は「あまりに好色がましくいらっしゃるのを」と訳す。 | 158 | ||
159 | 【あだ人とせむに】−『集成』は「粋人と申しても」。『完訳』は「好色人の資格も」と注す。 | 159 | ||
160 | 【今日も参らせたまふに】−大納言が若君を匂宮のもとへ。 | 160 | ||
161 | 【本つ香の匂へる君が袖触れば花もえならぬ名をや散らさむ】−大納言から匂宮への贈歌。「花」は娘の中君を喩える。『花鳥余情』は「元の香のあるだにあるを梅の花いとど匂ひの遥かなるかな」(兼輔集)を引歌として指摘する。 | 161 | ||
162 | 【まことに】−以下「あるにや」まで、匂宮の心中。 | 162 | ||
163 | 【花の香を匂はす宿に訪めゆかば色にめづとや人の咎めむ】−匂宮の返歌。 | 163 | ||
164 | 【心やましと思ひゐたまへり】−主語は大納言。『集成』は「不満に思っていられる」。『完訳』は「もどかしいお気持でいらっしゃる」と訳す。 | 164 | ||
165 | 【北の方まかでたまひて】−真木柱。継娘の大君に付き添っていた。 | 165 | ||
166 | 【若君の】−以下「見えざりしを」まで、北の方の詞。 | 166 | ||
c1 | 167 | 【宮のいと思ほしよりて】−東宮がすばやく気がついて、の意。<BR> | 167 | 【宮の、いと思ほし寄りて】−東宮がすばやく気がついて、の意。<BR> |
168 | 【兵部卿宮に】−以下「我をばすさめたり」まで、東宮の詞を引用。 | 168 | ||
169 | 【ここに御消息やありし】−こちらから匂宮に手紙を差し上げなかったか、の意。 | 169 | ||
170 | 【さかし】−以下「さることぞかし」まで、大納言の詞。 | 170 | ||
171 | 【晴れまじらひしたまはむ女などはさはえしめぬかな】−『完訳』は「晴れがましい宮廷勤めをなさるような女なども、あんなにはたきしめられない。やや不審の行文」と注す。 | 171 | ||
172 | 【源中納言は】−薫。 | 172 | ||
173 | 【梅は生ひ出でけむ根こそあはれなれ】−『集成』は「(芳香のある)梅は、生い出たものとねざしがゆかしく思われることです。薫の前世の因縁ということから、梅はどうしてあれほどの芳香あるのだろうか、と言う」と注す。『完訳』は「梅は生き立ちの素姓が殊勝ですね」と訳す。 | 173 | ||
174 | 174 | |||
175 | [第五段 匂宮、宮の御方に執心] | 175 | ||
c1 | 176 | 【人に見え世づきたらむありまはさらにと思し離れたり】−『完訳』は「結婚して世間並に暮すのは。連れ子のきびしい状況に置かれてもいるが、控え目すぎる性格からも結婚には無関心」と注す。<BR> | 176 | 【「人に見え、世づきたらむありさまは、さらに」と思し離れたり】−『完訳』は「結婚して世間並に暮すのは。連れ子のきびしい状況に置かれてもいるが、控え目すぎる性格からも結婚には無関心」と注す。<BR> |
177 | 【世の人も時に寄る心ありてにや】−「にや」語り手の推測を介在させた句。 | 177 | ||
178 | 【さし向ひたる御方々には】−両親揃っている姫君たちの意。大納言の大君・中君には継母ではあるが二親揃っている。しかし宮の御方は連れ子で片親であるという文脈。『集成』は「現に父君のいらっしゃる姫君たちには」。『完訳』は「本妻腹の御方々には」と訳す。 | 178 | ||
179 | 【御ふさひの方に】−「ふさひ」は、ふさわしい意。 | 179 | ||
180 | 【大納言の君深く心かけきこえたまひて】−『集成』は「夫の大納言は。以下、匂宮の文通のことを知っての北の方(真木柱)の思い。それで「大納言の君」という」と注す。 | 180 | ||
181 | 【ひき違へて】−以下「かひなげなること」まで、北の方の詞。 | 181 | ||
182 | 【何かは人の】−以下「見えさせたまふに」まで、北の方の心中。匂宮と宮の御方を許す気持ち。 | 182 | ||
183 | 【八の宮の姫君にも】−宇治八の宮の中君。『新大系』は「桐壺院の第八皇子であることが橋姫巻で紹介される。ここで唐突にも「八の宮の姫君」に匂宮が通うことが記されていることで、当巻の成立・巻序・年立などでさまざまな問題を生む」と注す。 | 183 | ||
184 | 【まめやかには思ほし絶えたるを】−主語は北の方。 | 184 | ||
c1 | 185 | 【かたじけなきを】−『完訳』は「匂宮の高貴な身が畏れ多いとだけ。体よく断る口実である」と注す。<BR> | 185 | 【かたじけなきばかりに】−『完訳』は「匂宮の高貴な身が畏れ多いとだけ。体よく断る口実である」と注す。<BR> |
186 | 186 | |||
187 | 源氏物語の世界ヘ | 187 | ||
188 | 本文 | 188 | ||
189 | ローマ字版 | 189 | ||
190 | 現代語訳 | 190 | ||
191 | 大島本 | 191 | ||
192 | 自筆本奥入 | 192 | ||
193 | 193 | |||
194 | 194 | |||
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196 | 196 |